小説『リトルアーモリー だから、少女は撃鉄を起こす』ショートストーリー公開!
小説『リトルアーモリー だから、少女は撃鉄を起こす』ショートストーリー公開!
2016年12月22日〜2017年1月5日にツイッター上で
「小説『リトルアーモリー だから、少女は撃鉄を起こす』MVP投票」を開催させていただきました。
投票結果で上位入賞したキャラクターが登場しますSS(ショートストーリー)を、著者のおかざき登先生が執筆。
さらにふゆの春秋先生からSSのシーンイラストもいただきました。MVPキャラたちのSSをどうぞご覧ください。
小説MVP 投票結果
小説リトルアーモリーSS番外章
スニーク・プレゼント・ミッション
それを言い出したのは、未世だった。
実戦でショックを受けた一年生たちを気遣った愛の提案で、五人でプールに遊びに来て、泳いだり遊んだりして水着から着替えた後のことだ。
「先輩に奢ってもらったお礼をしようよ。あのガンケースに張り直すステッカーをみんなでプレゼントするとか。あたしが先輩を引きつけておきますから」
そう耳打ちしてきた未世に、凛はグッと親指を立てて賛同の意を示した。
「……なるほど。うん、未世の分は頼まれた」
「あ、じゃあ、わたし、恵那さんを呼んできます……!」
鞠亜が恵那の方へと駆け出していく。それと同時に、未世も愛を引きつけるための陽動を開始して、作戦は開始されたのだった。
合流した凛と鞠亜と恵那の三人は、早速売店のステッカーコーナーへと向かう。
「そういうことなら、やっぱりこの辺のステッカーがいいんじゃないかしら」
恵那が指さしたのは、3Dアニメーション映画のキャラクターのステッカーだった。
「ですね。先輩、こういう映画好きだって言ってましたし……」
鞠亜がうなずく。
「……確かに。これとか好きそう」
凛が手を伸ばしたのは、ふわっとしたマシュマロのような介護ロボットと少年が主役の映画のステッカーだった。
「ちょ、待って、白根さん。3Dアニメ映画といえば、代表格はこっちでしょう!?」
恵那が示したのは、雪と氷の魔法を使える女王の物語のものだった。
「あ、あの、きっと先輩は可愛いのが好きだと思うんで、こっちの方がいいんじゃないでしょうか……?」
鞠亜は鞠亜で、黄色くて小さい謎の生物がたくさん出てくる映画のステッカーを手に取った。
「……可愛い?」
「可愛さで言ったら、動物モノとかもたくさんあるのに、あえてそれなの……?」
凛と恵那が首を傾げる。
「え、これ、可愛いですよね……? ちょっとドジなところとか……」
「……まあ、可愛くないとは言わないけど、この手の映画でドジは珍しくないような」
「で、でも、これって幼い三姉妹とか出てきますし! 先輩は兄弟が多いって言ってましたし!」
「あら、そういうことなら、あたしが推したのも姉妹の絆の物語よ」
「……そんなことを言ったら、こっちだって亡き兄の愛が描かれてる」
数秒、牽制し合うような睨み合いと沈黙が売り場を支配する。
「照安さんのその映画、確かに幼い姉妹は出てくるけれど、兄弟愛というよりは親子愛がテーマなんじゃないかしら」
「うっ。そ、それは……確かにそうかもですけど……」
「……恵那のそれだって、ちょっと自分の趣味が出過ぎ。姉の和花先生がいくら好きだからって……」
「ちょ、姉さんは関係ないでしょ! 別にただの姉妹で好きも嫌いもないわよ!」
ムキになって否定する恵那に、凛と鞠亜は「えー」と訝しげな目を向けた。
「で、でも、凜さんのも、お兄さん死んじゃいますよね……? それってどうなのかなって思うんですけど……」
「……確かに、縁起でもないかも」
「「「…………」」」
三人して、顔を見合わせる。
「ま、まあ、別にそこまで深刻に考える必要はないわね。映画なんか面白いかどうか、好きかどうかでいいんだもの」
「……確かに。別に、プレゼントするのが一枚じゃなきゃいけないわけでもないし」
「そ、そうですよ! 一枚ずつ買って、未世さんの分で別の映画のを一枚買って、四枚贈ればいいんです……!」
「ええ、そうしましょ。不毛な争いは疲れるだけだもの」
「い、異議なしです……!」
「……じゃあ、私がまとめて買ってくる」
それぞれが推していた映画のステッカーと、横にあった動物たちの街の物語のステッカーの計四枚を凛が手に取った。
「お、お願いします……! 後でお金は出しますから」
「プレゼントだし、レジでラッピングできるかどうか訊いてみてね」
そんなこんなで買い物を済ませて、三人は話し込んでいる未世と愛の元へと向かった。
「……お待たせ」
プレゼントを後ろ手に隠した凛の横で、
「未世さん、時間稼ぎお疲れ様ですっ」
と、おどけて敬礼した。
「時間稼ぎ?」
愛が首を傾げて、
「もう、迂闊なんだから……」
恵那が呆れ顔をする。
しかし、そんな恵那も、凛も鞠亜も、プレゼントを選んでいない未世までもが、きっと愛が喜んでくれるであろうことを確信して、頬が緩むのを隠しきれないのだった。
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illustration by ふゆの春秋