TOMYTEC

Little Armory リトル アーモリー

SPECIAL
小説『リトルアーモリー エクステンド−放課後のフロントライン−』ショートストーリー公開!

小説『リトルアーモリー エクステンド−放課後のフロントライン−』ショートストーリー公開!

小説『リトルアーモリー エクステンド−放課後のフロントライン−』
ショートストーリー公開!

2018年8月30日〜2018年9月19日に、
小説『リトルアーモリー エクステンド−放課後のフロントライン−』発売記念『リトルアーモリー第2回キャラクター人気投票』
を開催させていただきました。

MVP投票結果はコチラ >>

投票結果で上位入賞したキャラクターが登場しますSS(ショートストーリー)を、著者のおかざき登先生が執筆。
MVPキャラたちのSSをどうぞご覧ください。

小説リトルアーモリーSSカラオケボックス爆発物事件

みんなでカラオケに行こう、と言い出したのは誰だっただろうか。

それを鞠亜は覚えていなかった。いつもの分隊でのやりとりだったから、きっと未世あたりに違いない。

その程度で納得してしまうくらいには、ありふれた休日の過ごし方だった。

「それにしても、妙ね」

鞠亜と並んで歩きながら、恵那が呟いた。

「いつもなら誰かが少し早く着いたからって、集合場所で待ってるのが普通なのに、今日に限って先に行ってる、なんて」

そんな連絡が、つい先ほど、未世と凛から入ったばかりである。

「一番遅刻が多い未世さんが先に行くなんて、珍しいですよね」

「ホントにね。まだ約束の時間より一〇分も前なのに、いったい何分前に着いたのかしら」

そうぼやきながら、恵那がいつものカラオケボックスの自動ドアをくぐった。鞠亜もそれに続いて、追いかけるように足を速めて建物の中に入る。

「先に友達が来てると思うんですけど、朝戸か白根という名前で。さっき二〇三号室だと連絡をもらいました」

受付で、恵那がお店の人にそう話しかけている。

店員とは言え、躊躇なく面識もない人に堂々と話しかけられるというだけで、人見知りの鞠亜は恵那を尊敬してしまう。

「二階ならエレベーターを待つより階段で行った方が早そう」

振り返って、恵那が言う。

うん、とうなずいて、鞠亜は恵那と一緒に階段を上った。

そして、未世と凛が先に入っているはずの部屋のドアに恵那が手をかけ、開けた。

が、室内に二人の姿はなかった。

「……あれ?」

鞠亜が首を傾げ、恵那はドアに刻まれた部屋のナンバーを確認する。

「部屋を間違ってるわけではないみたいね」

「トイレにでも行ってるのかも……?」

「かもしれないわね。まあ、ここで待っていればそのうち戻ってくるわよ。少なくとも、入店はしてるはずなんだから」

「ですね」

四、五人用の個室に入って、二人はソファに腰を下ろした。壁際に固定されたソファ、テーブルの上にはタッチパネル搭載のリモコンと、二本のマイク、そしてタンバリンだのマラカスだのの定番のアイテム。そして新曲の広告を流し続ける大きなモニター。

ごくごくありふれたカラオケボックスの一室である。

未世と凛が戻ってきたら、壁のインターフォンで飲み物や料理を注文し、それがテーブルに所狭しと並ぶことだろう。

だが。

室内を見回していた恵那は、モニターの下、カラオケ機材の横に視線を固定して眉をひそめた。

「アレは何かしら……?」

恵那はソファに下ろしたばかりの腰を上げて、モニターの脇を覗き込んだ。

「何か変なモノでもあったんですか?」

そう尋ねた鞠亜だったが、恵那は返事もせず、任務中に敵を発見したときのような機敏さで跳び退った。

そしてマイクやらリモコンやらが落ちるのも構わず、テーブルを倒し、モニターから遮蔽を取るようにその影に入りこむ。呆気にとられていた鞠亜は、恵那にぐいっと腕を引っ張られてテーブルの遮蔽に引っ張り込まれた。

「え、あ、その、いったい何を……」

困惑する鞠亜に、恵那は、

「爆弾よ」

短くそう言い切った。

「えっ、ば、爆弾……!?」

「少なくとも、その可能性があるわ。妙な箱が置いてあって、中から秒針が動くような音がしたの。リボンをかけて包装してあったけど、きっとカモフラージュね」

「ええと、誰かへのプレゼントを誰かが用意していた、とか……」

「用意したなら朝戸さんか白根さんということになるわよね。今日は先輩は用事があって来られないって言ってたし。でも、今日は集まるメンバーの誰の誕生日でもないし、プレゼントを用意する理由も見当たらないでしょう?」

「それは、まあ……そうですね」

「だから怪しさの方が大きいわ。もし爆弾なら、おそらく時限式、でも他の起爆トラップが仕掛けられていてもおかしくないわね。移動させたら反応する振動式とか、開けたらドカンの光センサーとか」

「な、な、なんでこんなところに爆弾があるんですか!?」

「わからないけど……もしちょっと前のイクシス殺人事件に犯罪組織が関わっていたなら、報復があったとしてもおかしくはないわ」

「でも、わたしたちの身元は世間には公表されてないはずですけど……」

「あたし、警察の面子を潰して聴取でケンカ売ったりもしちゃったから、どこかから漏れていてもおかしくないわよ」

振り返ると、そこには唖然とした顔で室内の惨状を見やる未世と凛が居た。

「何やってんですか……?」

未世がようやく、それだけ言った。

テーブルの上にあったタンバリンやマラカスを床にぶちまけて倒したテーブルの陰に二人して身を寄せ合って隠れているのだ。確かに事情がわからなければ、恵那と鞠亜がおかしくなったと思われても仕方はない。

だが、危険は未世と凛にも及ぶのだから、照れたり恥ずかしがったりしている場合ではない。

「未世さん、凛さん、逃げてください……! 恵那さんが、あそこに爆弾らしきモノを発見したんです……!」

「は?」

一度首を傾げて、未世と凛は顔を見合わせた。

「あ、えっと、恵那ちゃん、ごめん……。あれ、あたしたちが用意したプレゼントで、爆発物でも不審物でもないんです」

申し訳なさそうに、未世が言った。

「……だから、ちゃんと来る時間も指定した方がいいって言ったのに」

やれやれ、と言いたげに、凛は肩をすくめた。その凛の手には、このカラオケボックスの『お誕生日お祝いプラン』と印刷されたパンフレットが握られていた。

「でも、あんまり細かいことを言うと、怪しまれてサプライズにならないし」

「……その結果、変に誤解させちゃったら意味ないけど」

「うう……」

どうにも話が呑み込めず、恵那と鞠亜は訝しげな顔を見合わせた。

「プレゼントって、別に今日は誰の誕生日でもないでしょう?」

恵那の指摘に、未世と凛は、

「誕生日じゃなくて、二人のコンビ結成のお祝いですよ」

「……長いこと、鞠亜がパートナー探しで苦労してたってのは聞いてたから」

と答えた。

「でも、中からカチカチとタイマーが動くような音がしたわよ?」

「うん、この際だから言っちゃうけど、プレゼントの中身は目覚まし時計ですから!」

「……プレゼントに目覚まし時計って、どういうセンス?」

凛が呆れ顔を未世に向ける。

「えー、だって、コンビを組んで以来、二人ともなんか忙しそうだったし、疲れが溜まって寝坊したら大変かなって」

「……ごめん、二人とも。これは未世に任せた私のミス」

「あー、いえ、うん……」

どうやら、サプライズを仕掛けようと二人はわざと先に来ていたらしい。そしてプランの申し込みや打ち合わせなどを店側としている間に、恵那と鞠亜が来てしまった、と。

照れを隠すように、恵那はコホンと咳払いを一つして立ち上がった。

「照安さん、ちょっと退いて」

恵那はそう言って倒れたテーブルを戻し、床に散らばったモノを拾い集め始めた。

「まったくもう、料理や飲み物が並ぶ前でよかったわ……」

恥ずかしさを誤魔化すように呟く相棒に微笑ましさを感じつつ、鞠亜は部屋の片付けを手伝おうと歩み寄るのだった。

SPECIAL TOPSPECIAL TOP